今回の記事で「朝食はフレンチトーストに」は終了します。「はじめまして」でスタートして1年が過ぎました。ブログを始めたのには、いくつか理由がありました。
昨年の冬に妻を亡くし、息子と二人だけの暮らしとなりました。当初、周囲からの意見があって4歳になったばかりの息子には母親の死を知らせていませんでした。しかし、息子の前では妻の話題を避ける周囲の人たちの対応に、ぼくは「このままではいけない」と思いました。息子には死んだという事実を伝え、空から見守ってくれているはずだと教えるべきだと。
ぼくは百日法要の前に菩提寺の本堂を借りて、息子に話しました。「いいか。これからお父さんが言うことは、とっても大事なことやけん、ちゃんと聞くんよ」。息子はにぶい光を放つ如来像が支配する空間に落ち着かないようでした。「あんな、お前のお母さんな、病気で死んでしまったんよ。死ぬっち分かるか」。息子は「分からん」。「もうな、息をせんごとなって動かんくなるんや。それでな、天国に行ってしまったんや」。息子は何も答えませんでした。おそらく、死を正確には理解できていなかったでしょう。それでも、遠くの病院で治療していると聞かされていた自分の母親が、もう目前に現れることがないことは分かったようでした。息子はうっすらと涙を浮かべ、静かにぼくに抱きついてきました。ぼくは息子を抱きしめました。抱きしめていた数分間が、1時間にも2時間にも感じられました。それが昨年の5月のことでした。
それから、本当の意味でのぼくと息子の二人の生活が始まりました。息子は、周囲が心配していたように心に暗い影を落とすこともなく、日々の暮らしに笑顔を絶やしませんでした。
母親の不在に対しての不安感を吐露することはありましたが、息子は状況を受け入れようとする気持ちも言葉にしました。その言葉にぼくは、いつも勇気付けられました。ぼくはそんな息子の言葉を残したいと思いました。そして、大変ではあるけど二人で楽しく暮らしていることを知ってもらいたいとも。その思いがこのブログとなりました。
とは言うものの、1年前を振り返ると苦闘の日々でもありました。喪失感に悩まされ、責任に押しつぶされそうになり、孤独感にさいなまれて、理解できない病気にもなりました。息子に習って笑顔を絶やさないよう努力していましたが、実はいつもいら立っていました。神さま(がいるのかどうか、今のぼくには分かりませんが…)さえも恨みました。それから、何とかここまで立ち直りました。
この1年の親子の歩みは特別です。とても大切な時間であり、もうこんな時間を過ごしたくないとも思います。そんな1年を記録したこのブログも、ぼくにとって特別な場所でした。やがて、特別がゆえに封印したいと思うようになりました。ここを卒業して次のステージに進みたいと考えたのです。このブログは本にして残します。息子がこの家を巣立っていくときに渡そうと思います。
ブログを始めたころは、心がからっぽでした。一年前の記事を読み返すと、言葉にできない沈み込んだ感覚がよみがえります。ブログを始めたのは、親子の時間を記録したいという思いのほか、自信を取り戻したいという気持ちからでした。当時は、やりがいを感じていた仕事から志半ばで離れてしまい五里霧中の状態でしたし、プライベートでも喪失感と闘っていました。そんな中、自信と呼べるほどのものはありませんでしたが、曲りなりにも形にできることといったら、文章を書くことくらいでした。ぼくにとっての「朝食はフレンチトーストに」は、運命に対しての反撃ののろしだったのです。
そして、文章を綴ることで自分の弱さを認められるようになりました。親の弱さはいら立ちとなって、その矛先は子どもに向かいます。育児に関しては、結果ではなく過程に重きを置き、その過程を見守りたいと思っています。しかし、ストレスでどうにもならなくなると、待てなくなるのです。うまくできないこと、スムーズに進まないことに対していら立ちが募ってきます。ぼくが「風呂に入るぞ」と言えば、息子は「えー、まだ入りたくない」と答えます。待てないぼくが「もういい。お前は入らんでいい!」と怒鳴ると、息子は泣き出します。なぜ「まだ風呂に入りたくない」のか理由を聞く余裕すらないのです。未だにそんなことを繰り返す日々ではありますが、少しずつでも頼れる父親になれるように努力したいと思っています。
当初はこんなに多くの方が訪れてくれるようになるとは思ってもみませんでした。コメント欄に救われることも少なくありませんでした。みなさんの言葉のおかげで、内に閉じこもることもなくがんばれたのだと思います。相談相手が限られる上に、ぼくは教えを請うことが得意ではありません。そんなぼくがブログで不安や悩みを吐露すると、親身になってアドバイスをくれました。孤独に負けそうなときは、温かい言葉をかけてくれました。らっちさん、kuriさん、まつさん、久住コウさん、湯さん、そのさん、Black Treeさん、ことりさん、きさん、かめごんさん、abcさん、アベシさん、かめポンさん、むーにゃんさん、Kさん、taketomoさん、こやぎさん、gaiuspliniusさん、sakura4703さん、あずさん、あかりさん、へいさん、のべさん。みなさんの言葉のおかげでここまでたどり着きました。ありがとうございました。
それにしても、です。人生はプラン通りに進みません。どうせ思い通りにならない人生なのだから、好き勝手にさせてもらいます。このブログは終了しますが、またどこかで反撃ののろしをあげたいと思っています。次もキーワードはフレンチトーストです。フレンチトーストと中山カオルを覚えておいてください。
一年間、本当にありがとうございました。それでは。
「あとがき」にかえて。
最近のコメント