3匹の子ぶた
保育所から帰るなり、「そうや、お父さん。ぼくのおうちは木でできちょんの」と4歳の息子。「そうで」とぼく。「えっ、そんなのいやだ。レンガがいいよお」
保育所で「3匹の子ぶた」の話を聞いたのでしょう。藁の家と木の家はオオカミに吹き飛ばされてしまいますがレンガの家は頑丈なので追い返せたというお話です(原作はもっと残酷のようですが)。
レンガの家。現代でいうならば、コンクリートの建物ということになるでしょうか。なるほど、子どもを含めてわれわれは、コンクリートなどの硬質な建材を用いた構造物にピラミッドや万里の長城のような永続的なイメージを抱いているのかもしれません。少なくとも自分の生涯よりは長く存在すると考えているのではないでしょうか。しかし実際には、耐震性の問題や再開発などにより、コンクリートといえども延命が難しいケースは少なくないのです。ぼくの住む大分市でも、国際的な建築家の磯崎新氏のデビュー作とされる大分県医師会館でさえスクラップ&ビルドの波に飲み込まれてしまいました。
結局のところ、人の作ったものはいつか壊れます。しかし、それを長く使っていこう、文化的意味を継承していこうと努力できるのも、また人なのです。都市の多くを戦争で焼失した日本だからこそ、戦後の建築物を文化として後世に残していってほしいと思います。特に市街地と呼ばれる地域には、そのような建物が点在しています。“まちなか”の潜在力として活用できるはずです。一つの利用方法が役割を終えたならば、次の中身を考えればいいのです。複合文化施設として生まれ変わった大分市のアートプラザ(旧大分県立中央図書館)などはその好例です。
さて、冒頭の会話ですが、息子にはこう答えました。「うちの家はな、大工さんが心を込めて一所懸命に作ってくれたけん、オオカミが来ても大丈夫なんで」。それを聞いた息子は「そうなん。よかったあ」。その安堵の表情といったらありませんでした。
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コメント
残念ながら、札束の前では、文化財を活かす智恵も吹き飛びますね…
こちらでは、戦前からある別荘が次々に壊されてます…
投稿: 湯 | 2009年6月18日 (木) 20時13分
かわいいね! ほのぼのしました
投稿: その | 2009年6月21日 (日) 23時07分